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  貝化石をさがそう!
 
黒松内の地層

黒松内には黒松内層と瀬棚層(せたなそう)という地層が露出(ろしゅつ)しています。
そのうち瀬棚層は、
今から約100万年前、黒松内あたりが海だった時に堆積(たいせき)した地層で、
たくさんの貝化石をはじめ、クジラやカイギュウの化石などもうまっています。


貝化石がとれる川


露頭に見えている貝化石


瀬棚層の特徴(とくちょう)
瀬棚層は、今から約120~60万年前、
今金、八雲、黒松内周辺が海だったころに海底につもった地層です。
地層の多くは、租礫(それき)(米粒大の細かい石)や砂、
コキナ(片栗粉のようなきめの細かい泥)などからできていて、
軽石をふくむ地域もあります。

約46億年の地球の歴史からすると、
“およそ100万年前”とはつい最近のことです。
現在、瀬棚層の上には別の地層が重なっていますが、
その層は厚くないのであまり重くありません。

というわけで、瀬棚層は上から強く押しつぶされていないため、
岩のように固くなっておらず、
釘やドライバーで化石を掘ることができるのです。

黒松内での化石堀りは、
みなさんのイメージする化石掘りとはちょっと違っているかもしれません。


貝化石がとれる場所

ブナセンターにお立ち寄りください。
貝化石のとれる場所、駐車場などご案内します。
くわしい地図もご用意しています。



貝化石をとる道具・クリーニングする道具

貝化石をとる道具
①バケツ:採った貝化石を入れておきます。
②ピッケル:かたい場所を掘るときに使います。
③ショベル:すこしかたい場所を掘るときに使います。
④マイナスドライバー:貝化石を掘るときに一番便利!目打ちなどで
 もOK。
⑤くぎ:ドライバーとくぎでだいたいの貝化石はとれます。
貝化石をクリーニングする道具
⑥洗面器:採った貝化石を、水をはった洗面器でクリーニングしま
 す。
⑦ザル:細かい化石を洗う時はザルが便利。
⑧ブラシ:化石を水につけ、ブラシでやさしく洗います。歯ブラシで
 もOK。

※以上の道具類は、すべてブナセンターで貸出しています。
※足元はながぐつではなく、かかとのあるサンダルか、ぬれてもいい
 運動靴がおすすめ。貝化石で足を切らないようにご注意ください。

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  貝化石を調べよう!
 
 
貝化石のけんさく


まずはとってきた貝化石をおおまかに「巻貝」と「二枚貝」でわけてみましょう。
基本的には「巻貝」は貝殻が巻いているもの(例外もあります)、
「二枚貝」は二枚の貝殻が向かい合って重なっているものです。


さらに、貝化石の“形”や“表面のもよう”をよく観察して、
「巻貝」と「二枚貝」の中でも、同じ貝のグループにわけてみましょう。

ここまでできたら、「けんさく表」で調べてみましょう。



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  貝化石のまめちしき

 (もくじ)
  ・貝化石からわかること
  ・二枚貝には前後左右がある?
  ・巻貝には右巻きと左巻きがある?
  ・貝の中には絶滅したものもいる?
  ・貝にあいた穴のヒミツ
  ・貝化石の色のふしぎ
  ・貝化石の表面をおおうコケのようなものの正体は…
  ・貝以外の大型生物の化石


 
貝化石からわかること

黒松内の貝化石掘り体験ができる場所では、
二枚貝が二枚そろって見つかる場合が多く、
そういった場所はかつて、流れがおだやかな海だったといえます。
一方、化石がこなごなになっている場所は、
激しい流れの影響を受けた可能性があります。

 
上の写真は黒松内の中里(なかさと)地域でみられる地層です。
ここでは寒流にすむ貝の化石が、ほとんどこわれた状態でみつかっており、
「当時の黒松内は、気候が寒く、(しお)の流れは激しかった」
ということがわかります。

また、貝の図鑑でけんさくしてみると、
貝がすんでいた地域やその深さ、海底の様子など、
より当時の環境がくわしくわかります。

貝が生きていた時代の自然環境がわかる化石を、
示相(しそう)化石」といいます。

さらに、絶滅種(ぜつめつしゅ)は限られた期間だけ生きていた生物なので、
化石がみつかった地層の年代を知る手がかりになります。
そういった化石を示準(しじゅん)化石」といいます。

 
二枚貝には前後左右がある?          
二枚貝には前後、そして左右の“方位”があります。
これがわかると図鑑を調べる時に便利なので、
二枚貝をとってきたらまず“方位”をたしかめてみましょう!



はじめに二枚貝の前後をしらべてみます。
貝のふくらんだ方を上にして置き、
二枚貝の中央から貝の殻頂(かくちょう)(一番とがっている部分)が
寄っている方が貝の前、その逆が貝のうしろ
ということになります。
(まれに例外の貝もあります。)

さらに、二枚貝の殻頂を上にして、
貝の前を向こう側に、うしろを手前側になるように、
左右の手ではさむようにして持ちます。



このとき、右手にもっている方が右の殻、
左手にもっている方が左の殻になります。

みなさんのとってきた二枚貝の
前後左右をたしかめてみてくださいね。


巻貝には右巻きと左巻きがある?



巻貝の殻頂(かくちょう)(とがった部分)を上にして、
右に口があれば”右巻き”、
左に口があれば”左巻き”です。

みなさんのとってきた巻貝は、
どちら巻きでしたか?


貝の中には絶滅したものもいる?
黒松内でみつかっている貝化石のほとんどは、
今も世界のどこかに生きている種現生種(げんせいしゅ)ですが、
今はもうどこにもいない種絶滅種(ぜつめつしゅ)も、
15種類以上みつかっています


同じホタテガイの仲間でも、左のトウキョウホタテは絶滅してしまいました。
同じ場所にすんでいたはずなのに、
なぜその種だけ絶滅してしまったのでしょう?

・気候が大きくかわった。
・地震や噴火などで海底の環境がかわった。
・環境にあわせて体のつくりをかえることができなかった。
・ほかの生き物に食べられた。
などなど、絶滅した理由はいろいろ考えられますが、
はっきりとした答えをだすことは、とてもむずかしいのです。


貝にあいた穴のヒミツ

みなさんのとってきた貝の中に、
2~3㎜くらいの丸い穴があいているものはありませんか?

それはアクキガイ科やタマガイ科などの肉食の貝が、
するどい歯がならぶ歯舌(しぜつ)を使って貝に穴をあけ、
食事をしたあとなのです。
穴をあけることを穿孔(せんこう)といいます。

image alt
エゾタマガイの食事の様子(クリックで拡大表示)

Q. 穴をあけるのにかかる時間はどのくらい?
A. 研究によると、ヨーロッパチジミボラ(アクキガイ科)が
ヨーロッパイガイの貝殻に穴をあける速さは「1日に0.36㎜ずつ」と、
大変ゆっくりとした記録が残っています。(Hughes & Dunkin, 1984b)
よく穿孔されているイサオマルフミガイの貝殻の厚さは約1.5㎜ほどなので、
この貝を食べるには4日と少しかかるということになります。
食事途中にえものに逃げられてしまうこともあるとか…。

Q. かたい貝殻に穴をあける歯舌は、すりへったりしないの?
A. 歯舌の表面にならぶするどい歯は、
穴をあけるごとにだんだんすりへってしまいます。
すりへった歯はやがて取れてしまいますが、
新しい歯が次から次にせりだしてきて、
いつもするどい歯でエサをとれるようになっています。



貝化石の色のふしぎ

採取した貝化石はほとんどが白色をしていますが、
生きていたころの色をそのまま残しているものもあります。


上の写真のエゾサンショウガイの貝化石は、
鮮やかな色が残っています。


 
 
上の写真のエゾヒバリガイ(上)、
エゾワスレガイ(下左)やウチムラサキガイ(下右)は、
色が二色にわかれています。
白い部分は、長いあいだ地層から顔を出して日焼けしてしまった部分。
逆に長いあいだ地層にうまっていた部分は、
生きていた頃そのままの色が残っています。
というわけで、化石を保管するときは、
箱に入れて暗い所にしまっておくと長く色が残せます。

 
貝殻の表面を殻皮(かくひ)(膜や毛)におおわれているタイプの貝は、
化石になる過程で殻皮がなくなります。
一般の図鑑にのっているアヤボラ(上左)は、
表面が黄褐色(おうかっしょく)の殻皮と毛におおわれていますが、
瀬棚層から見つかったアヤボラの化石(上右)は、すっかり殻皮がとれて、
殻に刻まれた模様がクッキリと見えています。

現生の貝図鑑で化石を調べるときは、
殻皮の有無による見え方の違いも考えなければなりません。
※上左画像:奥谷喬司編・監修(1996)「世界文化生物大図鑑(貝類)」
p113.“アヤボラ”の図を引用。


また添別川(そいべつがわ)からみつかる化石には、上のように黒色のものがあります。
これらは瀬棚層に含まれる砂鉄の成分が影響して、
黒色になったのではないかと言われています。


貝化石の表面をおおうコケのようなものの正体は…
 
ときどき貝化石の表面を、上の写真のように
小さな穴があいたコケのようなものが覆っていることがあります。
この穴の中には体長0.25~1.5ミリほどの、小さな「コケムシ」がすんでいました。

化石でいう「コケムシ」とはムシの化石ではなく、
コケムシがつくった集合体のことをいいます。

(コケムシのイメージ図)

コケムシは岩や貝殻、海藻、船などいろいろなものにくっついて生活します。

ホウキのような「触手冠(しょくしゅかん)」という器官で
とらえたプランクトンなどを食べ、
自分のまわりに石灰質(せっかいしつ)などでできた部屋をつくります。
コケムシには数多くの種類があり、
それぞれ集合体の形が違っています。


瀬棚層で見つかるコケムシの形は、
ネット状、枝状、板状、トゲ状、円形など様々です。
写真の化石は、
数百~数千匹のコケムシの”集合住宅のあと”というわけです。

特に「マルエダコケムシ」(写真右上)というコケムシが、
瀬棚層の中にたくさん産出されます。

瀬棚層のコケムシの多様さは2007年に黒松内を訪れた
国際的なコケムシ研究者グループに、
「まるでコケムシパラダイスだね!」
と絶賛されたほど。

コケムシの仲間は乾燥に弱いので、
水が干上がってしまうような場所では生きられません。
ということは、瀬棚層の一部のように
コケムシが化石としてたくさん見つかる場所は、
潮だまりや、潮の満ち引きの影響を受けない場所だった、といえます。


貝以外の大型生物の化石

黒松内では、貝化石発掘体験のできる場所とは別の場所で、
貝以外の大型生物の化石も見つかっています。


上の写真はホホジロザメの歯の化石です。
両辺にはこまかなきざみがはいっています。
サメの骨格は化石としては残りにくい軟骨でできているため、
歯の方が見つかりやすいのです。
(2001年 国立科学博物館 甲野直樹氏 同定)




上の写真は、現存するジュゴンやマナティの仲間で、
ステラーカイギュウ類の肋骨(ろっこつ)の化石です。
この種はすでに絶滅しています。
A3、B2 の写真からわかるように、
骨の中心部がつまっていて、「バナナ状」の肋骨であることが、
カイギュウの特徴をしめしています。
(1995年 札幌市博物館活動センター 古澤仁氏 同定)

 
左上はトドの右下あごの犬歯、
右上はシャチの右下あごの歯の化石の写真です。
1954年に産出され、
現在は国立科学博物館に保存されています。
(2002年 国立科学博物館 甲野直樹氏 同定)


1993年、「ヒゲクジラ亜目/ナガスクジラ科」の頭骨の一部が発見されました。
真ん中の穴は脊髄(せきずい)という神経の管が通る穴です。
化石の下辺の幅が180㎝を越えているため、
このクジラの体長は20mをはるかに越えていたと推測されています。
水に浮いたり、はやく泳いだりするために、
体を軽くするよう、クジラの骨は軽く、やわらかく、
スポンジ状になっています。
写真の化石は、現在ブナセンターに展示されています。
(1993年 札幌市博物館活動センター 古澤仁氏ほか 同定)

他にクジラの脊椎骨(せきついこつ)の化石も見つかりましたが、
発見当時は農家の方が植木台に使っていたそうです。
脊椎骨の真ん中のくぼみに、ちょうどよく植木鉢がはまっていたとのこと。
実は貴重な資料である事を伝えたところ、
快くブナセンターに寄贈していただきました。

以上のように大型の生き物の化石でなくても、
ウニやカニなど貝以外の化石が見つかることがあります。
みなさんも探してみてください!

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  参考文献
 
  ≪論文一覧≫
・能條歩・長谷川四郎・岡田尚武・都郷義寛・鈴木明彦・松田敏孝(1999.5)「南西北海道瀬棚層の広域的岩相層序区分と生層序年代」,『地質学雑誌』 第105巻 第5号
・鈴木明彦(1989)「西南北海道 黒松内地域の瀬棚層の貝類化石群」,『地球科学43巻5号』
・千葉蘭児(1972) 「マルフミガイ属の2新種 エリモマルフミガイとイサオマルフミガイの記載」4号,日本貝類学会
・古澤仁・横山光・木村方一 (2010)「北海道黒松内町の前期更新世から産出したナガスクジラ科の鯨類化石」,『化石87号 別刷』,日本古生物学会
・島口天・奈良正義(2015) 「青森県立郷土館収蔵の下部更新統浜田層産貝化石」,『青森県立郷土館研究紀要』 39号
・沢田義男 (1962) 「The Geology and Paleonto of the Setana and Kuromatsunai Areas in Southwest Hokkaido,Japan」,『室蘭工業大学研究報告』
・古澤仁・木村方一(1995)「北海道・本別町(前期鮮新世)と黒松内(後期更新世)から産出した海牛類化石」,『地球科学』49巻4号

≪書籍一覧≫
・浜野洋三(1995)『地球のしくみ』 日本実業出版社
・黒松内町ブナセンター (1997) 『瀬棚層貝化石リーフレット』
・日本の地質「北海道地方」編集委員会編 (1993) 『日本の地質 Ⅰ 北海道地方』 共立出版株式会社
・地学団体研究会 (1997)『新版地学事典』 平凡社
・波部忠重編(1977)『日本産軟体動物分類学 二枚貝綱』 北隆館
・伊藤潔・波部忠重(1979)『ちりぼたん』10巻第8号 日本貝類学会
・奥谷喬司編・監修(1996)『世界文化生物大図鑑(貝類)』 世界文化社
・波部忠重・伊藤潔(1991)『原色世界貝類図鑑』(北太平洋編) 保育社
・奥谷喬司編(2000)『日本近海産貝類図鑑』 東海大学出版会
・波部忠重(1990)『学研生物図鑑 貝Ⅰ』 学習研究社
・波部忠重・奥谷喬司(1991)『学研生物図鑑 貝Ⅱ』 学習研究社
・内海富士夫(1996)『学研生物図鑑 水生生物』 学習研究社
・藤田家徳・浜田隆士・山際延夫(1986)『学生版日本古生物図鑑』 北隆館
・肥後俊一(1973)『日本列島周辺海産貝類総目録』 長崎県生物学会
・磯貝文男他(1993)『地学ハンドブックシリーズ7(貝化石のしらべかた)』 地学団体研究会
・福田芳生(1990)『化石探検 Pert 1』 同文書院
・奥谷喬司編著(1997)『貝のミラクル 軟体動物の最新学』 東海大学出版
・岩崎敬二(1999)『貝のパラダイス』東海大学出版
・樋口滋雄(2006)『北の貝の仲間たち』
・大越健嗣(2001)『貝殻・貝の歯・ゴカイの歯』成山堂書店
・東京大学総合研究博物館 「標本データベース」<http;//www.um.u-tokyo.ac.jp/web_museum/database.htm>
・浅見崇比呂(1997)「左巻・右巻のミラクル」東海大学出版
・今金地域研究 第一号 別刷 1995
・Aキャンベル編 山田真弓監修(1991)『動物大百科(第14巻水生生物)』 平凡社
・佐々木猛智(2013) 『貝類学』 東京大学出版

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