エゾイソチドリガイ(カツラガイ科)
Tricamathina nobilis (A.Adams, 1867)


  
△ 殻はうすく、うずを巻いておじぎをしたような形が特徴の巻き貝です。
△ この貝の形から、成長するにつれ先がすぼんで丸くなったように思うかもしれませんが、実際は逆です。殻は殻頂(かくちょう)部分から成長してラッパ状に広がっていきます。
△ 背中に残る二本の線は、生きていたとき厚い殻皮(かくひ)が立ち上がっていた部分です。

☆ 東北地方~北海道、千島に分布。
☆ 水深15~350mに生息。


オオヘビガイ(ムカデガイ科)
Thylacodes adamsii (Mörch, 1859)

△ チューブ状の巻き貝。この貝にはフタがありません。
△ 殻の表面には、ウロコ状になった成長脈(せいちょうみゃく)が見られます。
△ 石や貝殻などにくっついて成長するため、接着している面は平らですが、巻き方が不規則で全体の形は一定ではありません。
△ 動くことができないので、チューブの先からネバネバした糸をクモの巣のように出し、かかったエサをたぐり寄せて食べています。

☆ 北海道南部以南~九州、および沖縄。中国大陸沿岸に分布。
☆ 波打ち際~水深約10mの岩や石などに付着。


シワロウバイガイ(ロウバイガイ科)
Nuculana pernula pernuloides (Dunker,1882)
  
△ 殻はややふくらんでいて、厚みがあります。
△ 殻は後ろに向かってくちばしのように細くなり、はしは直線状です。
△ 成長肋(せいちょうろく)は弱く不規則で、くちばしの内側にはひだが見られます。

☆ 日本海。房総半島~オホーツク海に分布。
☆ 水深約100~400mの、砂や泥の底に生息。


マガキ(イタボガキ科)
Crassostrea gigas (Thunberg,1793)
  
△ 殻は一個だけで見ると、光沢(こうたく)のあるうすい層が重なり合ってできています。左殻はふくらみ、右殻はやや小さく平らです。
△ 左殻全体を岩や石、貝殻、かたい土などに付着させて成長するので、形は周りの形状に合わせて変わります。
△ 写真のカキはたくさんの殻が重なった状態で、まるで石ころのようにかたくなっていますが、端の方はポロポロともろくはがれてしまいます。

☆ アジア全域の、真水と海水が混じった河口部(川が海に注ぐ場所)に分布。
☆ 波打ち際の、海底の岩や石ころに付着。


オシドリネリガイ(ネリガイ科)
Pandora pulchella (Yokoyama,1926)
  
△ 殻の特徴はのっぺりした半月形。左殻がほんの少しふくれています。
△ 前に寄った殻頂(かくちょう)からは、後縁(こうえん)に向かって強い幅のあるひだがのび、腹縁(ふくえん)に向かってゆるくカーブした弱い段が見られます。
△ 右殻にある大きな丸い穴は、肉食の貝に食べられたあとです。

☆ 北海道~オホーツク海、日本海に分布。


フジツボ
  

節足(せっそく)動物。
19世紀ごろまでは貝と考えられていましたが、今ではエビやカニと同じ甲殻類(こうかくるい)の仲間であることがわかっています。
体の周りをかたい石灰板(せっかいばん)でおおい、石や船底、ブイなどのほか、いろいろな海の生き物にもへばりついて生活しています。
黒松内の瀬棚層(せたなそう)ではたくさんみつかりますが、右上の写真ように石灰板がばらばらに発見されることも多いので、見なれないうちは貝殻の一部と思ってしまうかもしれません。
ほとんどの貝殻には、表面にたてすじや横すじが何本もあります。採った化石が貝なのかフジツボなのか迷ったときは、殻の表面をよく観察してみましょう。


ニセサンゴ
  

刺胞(しほう)動物。
サンゴは、刺胞動物の中でも、石灰質(せっかいしつ)(炭酸カルシウム)や角質(かくしつ)(硬タンパク質)でできた骨格をもつ生物です。
サンゴはあたたかい熱帯の海にばかりいるとはかぎりません。黒松内の瀬棚層(せたなそう)でみつかるニセサンゴは北方系のサンゴで、サンゴ(しょう)をつくらない種類です。
ニセサンゴの多くは小枝のような形をしていますが、その太さや長さはさまざまです。色は灰色、チョークのような手ざわりで、角は丸みをおびています。


カシパンウニ
  

棘皮(きょくひ)動物。
ウニの仲間で、菓子(かし)パンににているのでこの名がつきました。英語でも「sea biscuit(海のビスケット)」という名でよばれています。
生きているときは短いトゲがたくさんはえていますが、化石ではトゲはほとんどとれてしまいます。
(はら)側(写真右)の真ん中には口があります。
()側(写真左)のとくちょう的な5枚の花びら模様(もよう)は、よくみると小さな(あな)がならんでつくられています。ここは管足(かんそく)という体の一部が出るところです。管足は先たんから粘液をだしてエサを口にはこんだり、トゲと同じく体をささえたり、石や海藻(かいそう)などにすいついて移動したり、方向転換するためにつかわれます。
殻がうすく、形もひらべったいカシパンウニはこわれやすく、瀬棚層(せたなそう)から完全な形で採集することはかんたんではありません。


ウニの化石の一部
  



棘皮(きょくひ)動物。
黒松内瀬棚層(せたなそう)でみつかるウニの殻は、多くの場合イボがならんだ小さな四角いカケラの状態(写真左上)でみつかります。
ウニの殻は多くの四角いカケラがあつまって、丸い形をつくっています。死んでしまうとカケラ同士をくっつけているやわらかい組織がくさり、形がくずれてバラバラになるのです。
右上の写真は、黒松内市街地にほど近い山から採集された巨大なウニ。生きていた時のウニの形がのこっている貴重な化石です。
砂や泥の中を注意してみると、とても細いウニのトゲ(写真下)がみつかることもあります。たてにスジが入っていて、太い方の先が白くなめらかになっています。

  

左の写真はウニの「アリストテレスの提灯(ちょうちん)の一部です。
「アリストテレスの提灯」とは日本語の正式名称で、ウニの咀嚼器官(そしゃくきかん)(たべものをかみくだくところ)のことをいいます。
ギリシャの哲学者アリストテレス(紀元前382~322年)が、地中海のレスポス島で海産動物の研究中、これを発見して名前をつけました。ここでいう「提灯」とは、日本式の丸い提灯ではなく、ギリシャでつかわれていた街灯(がいとう)のことをさしています。全体図は右の絵。
ウニは砂や泥にもぐるタイプと、岩場にすむタイプの二つがいます。上の写真は、砂や泥にもぐるタイプのウニのもので、見つかったのは右の絵の赤丸でしめした部分のカケラです。
ふつう私たちが食べているバフンウニなどは岩場にすんでいるタイプで、この「提灯」の形もちがいます。


腕足類(わんそくるい)
腕足類はカンブリア紀初期(約6億年前)から現在まで、世界中の海岸に生息しています。3億年くらい前にもっとも繁栄(はんえい)しましたが、そのころから形や構造はほとんどかわっていません。
19世紀ごろまでは、二枚貝の仲間と考えられていましたが、今ではまったく別のものであることがわかっています。
殻のつけね近くにある(あな)から細く強い糸を出し。海底の岩や貝殻にくっついて生活しています。殻の中に「(うで)」といわれる、かたい一対のうずまきがあります。

≪二枚貝とのちがい≫
腕足類は、片方の殻がもう片方をつつみこむような形をしています。大きくつつんでいる方を“腹”、つつまれている方を“背”といい、それぞれの殻は左右対称です。一方で、二枚貝の場合は右殻、左殻といい、それぞれの殻は左右非対称です。
腕足類は背と腹の殻をつなぐ蝶番(ちょうつがい)が発達していないため、二枚貝ほどひらきません。一方で、二枚貝蝶番は強力なので、大きくひらきます。



カメホウズキチョウチン Terebratalia coreanica
腹側の殻がよくふくらみ、背の中央には浅くて広いみぞのようなくぼみがあります。生きている時の殻の色は赤色。
北海道から本州中部にかけて、沿岸の浅いところから大陸棚(たいりくだな)のふちまで分布。



タテスジホウズキガイ Coptothyris grayi
形はやや円形かおうぎ形。腹・背ともにクッキリとした放射状のでこぼこがあります。
古くからホオズキガイとかヤエギクとよばれ、二枚貝の仲間にいれられていました。殻と殻をつないでいる蝶番の部分が、二枚貝とはちがっています。
北海道から九州にかけての大陸棚、特に水深100mくらいのところにすんでいます。



ホウズキガイの仲間
五角形にちかい形をしていますが、ブナセンター所蔵(しょぞう)のものでは完全な形を確認できていません。
古生物図鑑でくらべると「カクホウズキガイ」が一番近いのではないかと思われますが、まだ確定できていないため、ここでは「ホウズキガイの仲間」としました。


石灰藻(せっかいそう)
  

写真の白いコブのように見える部分は、石灰藻という植物の化石です。
川や海の中に生えている()〈海藻〉の中には、体から石灰分を出すものがいます。この藻が石や貝殻に付くと、表面を覆うように広がったり、丸形、枝状、こぶ状に盛り上がるなど、元は何に付いたのか判らなくなるくらい様々な形に成長していきます。
石灰藻は植物なので、海水が透明であり、海岸に近い浅い所で、太陽の光をとりこみ光合成を行なって育ちます。このことから瀬棚層時代の添別川付近は、浅くてきれいな海だったことがわかります。


有孔虫(ゆうこうちゅう)


古生代から現代まで、地球上のあらゆる海域に分布しています。すでに絶滅してしまった種類もふくめて、約25万種がしられています。
水中にただよっているものと、海底にすんでいるものがあり、それぞれの種に適した水温や塩分濃度、深度、底質などの生息環境(せいそくかんきょう)もわかってきています。
有孔虫はいろいろな化石といっしょにみつかります。有孔虫をしらべると、いっしょにみつかった化石がどの時代に、どんな場所にすんでいたかわかるため、古生物学上とても重要な生き物なのです。
大きさは普通1㎜くらい。殻はらせん状、うずまき状、同心円(どうしんえん)状などの形をしています。


カニの爪の一部
  

はじめは石のカケラかと思いましたが、ルーペでみると先がとがり、裏と表にいくつかの丸みをおびた突起がみえました。「もしかして?」と思い、化石の研究者の方にたずねると、これはカニの爪だということがわかりました。
おそらく甲羅がイチョウの形をしている「イチョウガニ」ではないか、とのことです。



イチョウガニ Cancer japonicus
甲羅の直径は10㎝くらい。深さ50~100mの海底にすんでいます。
今でも東京湾以南~土佐湾でみられるカニです。
※画像:内海冨士夫(1983)「学研生物図鑑・水生生物」p131."イチョウガニ"の図を引用

★小さな大発見
 上の“カニの爪”の化石は小学6年生の児童が、またウニの項目にある“アリストテレスの提灯”は釧路から来られたご夫婦が、添別川で採取されたものです。「何の化石だろうか」との問い合わせがあり、専門家の方にお尋ねした結果、新しくブナセンターの記録に加えることができました。
 その後、添別川の砂や泥を注意深く探すと、たくさんのカニの爪、アリストテレスの提灯のかけらがいくつも見つかりました。決して珍しい化石というわけではなく、あまりに小さかったり、不完全な形だったりして、今まで誰もその存在に気が付かなかったのです。
 毎年黒松内ではたくさんの人が瀬棚層の化石を採集しています。よく調べて見ると、その時の砂や泥の中に、思いがけない「発見」が潜んでいるかもしれません。


コケムシの仲間
  
(左:アミメコケムシ 中:サラコケムシの仲間 右:サラコケムシの仲間)

  
(左:ハグチコケムシの仲間 中:フトクサコケムシ 右:マルエダコケムシ)


(ユツトゲコケムシの仲間)

外肛(がいこう)動物。
ときどき貝化石の表面を、小さな(あな)があいた苔のようなものがおおっていることがあります。この孔の中には、かつて体長0.25〜1.5mm という小さなコケムシという生き物がすんでいました。
化石でいう『コケムシ』とはムシ自体の化石ではなく、コケムシが作った集合体の化石のことをいいます。
コケムシは岩や貝殻、海藻、船などいろいろなものにくっついて生活します。ホウキのような触手冠(しょくしゅかん)という器官でとらえたプランクトンなどを食べ、自分の周りに石灰質などでできた部屋を作ります。写真の化石は、数百〜数千匹のコケムシの〝集合住宅のあと〟というわけなのです。
コケムシは多くの種類があってそれぞれ集合体の形が違っています。黒松内の瀬棚層で見つかるコケムシの形はネット状・板状・トゲ状・円形など様々です。写真以外にもいろいろな形をしたコケムシがいるので、さがしてみてください。